セロトニン再取り込み阻害薬による不安緩和作用の作用機序解明-光遺伝学を用いて

大村 優
(北海道大学大学院医学研究科 助教)

2014年6月16日月曜日

脳のネットワーク地図がマウスでは完成間近か?

ちょっと前の話ですが、Allen Institute for Brain Scienceという世界中の脳科学研究者の味方と言ってもよい組織(これも米国なんです...)から良い意味で恐ろしい論文が発表されました。
題して"A mesoscale connectome of the mouse brain"(doi:10.1038/nature13186)
「マウスにおける中規模の脳地図」とでも訳せばよいでしょうか。

この論文はマウスの脳内ネットワークをかなり明確な形で明らかにしたものです。
つまり、どの脳部位がどことどこにつながっていて、どこから連絡を受けているか、ということを明らかにしてしまったのです。PCに例えるなら、脳内の配線図が得られた、とでも言えばよいでしょうか。

これまでも脳のネットワークを明らかにしようという試みは当然あったのですが、技術的な問題があったために、一つ一つコツコツやってきたのです。いわば、複雑に配線されたスーパーコンピュータの中身を配線一本ずつ確認する、というような作業でした。

しかし、最近のウィルスベクター、顕微鏡の発展、コンピュータのデータ容量の増大をフルに活用して、彼らはこれらの配線を一気に明らかにしてしまいました。

さらに素晴らしいのは、彼らはこの情報を世界中に一般公開していることです。

まだ脳地図は完成には至っていませんが(だから「中規模」の地図と彼らは称している)、もう完成は目前に来ていると言えるでしょう。

私は正直、この膨大な情報から具体的に何が得られるようになるかがまだちゃんと思い描けていません。

ただ、ゲノム解析から得られた情報のように、大きな可能性を秘めた情報の宝庫であることには間違いありません。

こういう時代が来たのだ、と興奮するとともに、このような取り組みに日本の脳科学界が出遅れていることがちょっと悔しいです。

1 件のコメント:

  1. 大村さん、素晴らしいニュースをシェアしてくれてありがとうございます。医学・生命科学系の研究は、謎を一つ一つ辛抱強く解明していくところが、技術・工学系の学問と少し違いますね。でも、今回のようなブレークスル―的研究成果の陰に、顕微鏡の発展や、記憶容量の増加といった電子工学系の学問の成果が大きく寄与している点は面白いですよね?医学・農学・生命科学
    系の研究領域と物理・化学・工学系の研究領域間の知の融合とかシェアとかを進めるのに日本はすごく適切な国なのではないか?と思います。
    今回のアメリカの例のように、自分たちの研究成果を世界中に一般公開するというのも素晴らしいことですね。さらに、このような研究を世界規模で協力し合っていくような組織とかグループとかが生まれることを期待します。
    でも、更に大切なのは、このような研究を科学者の一人よがりにせずに世の中にわかりやすく説明することではないでしょうか?そうすることで、将来の科学を支える分厚い層が日本に築かれることになります。
    やさしい科学技術セミナーもそういう心構えで行って頂きたいと思います。

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