セロトニン再取り込み阻害薬による不安緩和作用の作用機序解明-光遺伝学を用いて

大村 優
(北海道大学大学院医学研究科 助教)

2015年8月9日日曜日

論文紹介:抗うつ薬のフルボキサミンは幼若期ストレス負荷ラットのうつ様行動を改善する

私と大学院生が中心となって進めた研究論文がつい先日掲載されました。

Repeated fluvoxamine treatment recovers juvenile stress-induced morphological changes and depressive-like behavior in rats.
Lyttle K, Ohmura Y, Konno K, Yoshida T, Izumi T, Watanabe M, Yoshioka M.
Brain Res. 2015, 1616: 88-100.

第一著者のKerise Lyttleさんはジャマイカからの留学生で、今年の春無事学位を取得して卒業しました。

①この研究では、乳離れしたばかりの仔ラットにストレスを与えました。そうすると、大人になった後もうつ病のような症状を示しました。これは、子供のころにトラウマになるような経験があるとその後の精神疾患発症率があがる、というヒトの研究とも一致するものでした。

②次に、幼少期にストレスを受けたラットの脳がどのような変化を起こしているのかを調べました。すると、内側前頭前野腹側部という脳の部位において、神経細胞が委縮してしまっていることが見出されました。この長ったらしい名称の部位は、うつ病との関係が繰り返し報告されている脳部位です。

③さらに、この状態をどうやったら治せるのか?という問題に取り組むために、フルボキサミンという抗うつ薬を2週間投薬しました。薬の投与は仔ラットへのストレス負荷が終わった翌日から開始しています。すると、①、②で見られていたような症状がほぼ回復しました。

以上が研究の概略です。

この研究の問題点は、③で実施したような抗うつ薬の投与が実際にヒトの子供に対してできるのか?ということでしょう。
A. まず、トラウマになるような経験をした子供を速やかに発見して治療にあたる、ということ自体が難しいです。
B. さらに、子供に抗うつ薬を投薬することについては、副作用の観点から問題視されています。

A.については行政の問題だと思うので科学者としてはノータッチですが、B.については現在研究を進めているところです。なぜ子供に抗うつ薬を投与すると、大人では見られないような副作用が出てしまうのか?この問題を解決できれば、今回紹介した研究の成果も活きてくるでしょう。

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