セロトニン再取り込み阻害薬による不安緩和作用の作用機序解明-光遺伝学を用いて

大村 優
(北海道大学大学院医学研究科 助教)

2016年1月28日木曜日

論文紹介:ラット内側前頭前皮質のセロトニンが排尿を制御する

最近、私が指導していた臨床医の方の研究論文が無事受理され、発表されました。

The role of serotonergic mechanism in the rat prefrontal cortex for controlling the micturition reflex: an in vivo microdialysis study.
Chiba H, Mitsui T, Kitta T, Ohmura Y, Moriya K, Kanno Y, Yoshioka M, Shinohara N.
Neurourol Urodyn. 2015 Jul 30. doi: 10.1002/nau.22843. [Epub ahead of print]

第一著者の千葉先生は泌尿器科の医師で、医学博士の学位を取るために基礎医学の研究室に出向、ということで、研究指導を行ってきました。さすが外科医というか、動物の手術に関しての飲み込みが非常に早く、指導が楽でした。自分が泌尿器疾患に罹ったら千葉先生に執刀してもらいたいなあ、と思います。

さて、研究内容ですが、簡単に言うなら「ネズミを用いて内側前頭前皮質という脳の部位でセロトニンを増やす操作をしたら、排尿間隔が伸びたよ」ということです。言い換えれば、脳内のセロトニンを増やしたら排尿を制御できる、おしっこを我慢できるのではないか?という示唆を与える研究です。

日本排尿機能学会の調査によれば40歳以上の12.4%に過活動膀胱の症状があり、その約半数の人に尿失禁があるそうです。生活に支障をきたしますからこの治療は重要なのですが、あんまり受診しないそうです。恥ずかしいからですかね。「年をとったら仕方が無いんだ」という認知が広まって、受診率が上がるといいのですが。

以下、もう少し詳しく研究内容について説明しましょう。

ラットの内側前頭前皮質という場所は、以前別の論文紹介でも紹介したように、何かしらの欲求の抑制(我慢、と言い換えても良いでしょう)に関与する脳領域です。まずこの脳領域のセロトニン遊離量を測定し、ラットの排尿を誘発(膀胱に液体を流す)しているときにセロトニン遊離量がどうなるかを見ました。すると、ラットが頻繁に排尿しているときには内側前頭前皮質でのセロトニン遊離量が増えていることが分かりました。

次に、内側前頭前皮質にセロトニン再取り込み阻害薬というお薬を流して、その場所でのセロトニンの濃度を上げました。そうすると、ラットはあまり排尿しなくなったのです。

以上が概要です。

まだまだ調べるべきことはたくさんありますが、セロトニン再取り込み阻害薬が過活動膀胱に苦しむ患者さんの福音となる可能性があります。今回はセロトニンの遊離量を調節しただけですが、排尿に関与するセロトニン受容体(セロトニンを受け取って情報を次に伝える受信機のようなもの)の種類まで特定できれば、もっと効率的な薬の開発も可能になるでしょう。

1 件のコメント:

  1. 私ではなく、先輩から聞いた話なんですが、その人は日中はあまり頻繁に尿の排泄のためにトイレに行くことはないが、夜になると尿排泄のインターバルが短くなり、一晩に3~4回はトイレに立つので、奥さんから文句を言われるようになったと言ってました。先生のおっしゃっている過活動膀胱とは少し
    違うのかもしれませんが、先輩には、夕方以降の飲酒量が多すぎるのではないですか?と言っておきました。(笑)

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