セロトニン再取り込み阻害薬による不安緩和作用の作用機序解明-光遺伝学を用いて

大村 優
(北海道大学大学院医学研究科 助教)

2018年2月12日月曜日

<論文紹介>児童青年期のマウスにおける衝動性の測定:3-選択反応時間課題の新しい訓練方法

先日、成熟前のマウスで衝動性を測る方法を開発した論文が受理されました。Open Accessなので誰でも見れます。

Assessment of Impulsivity in Adolescent Mice: A New Training Procedure for a 3-Choice Serial Reaction Time Task.
Sasamori H, Ohmura Y, Kubo T, Yoshida T, Yoshioka M.
Behavioural Brain Research. 2018. doi: 10.1016/j.bbr.2018.01.014. [Epub ahead of print]

これは医学部生の笹森瞳さんとの研究です。笹森さんは学部生のうちから研究室に自主的に出入りし、論文発表までこぎつけました。春からは晴れて医師兼大学院生...のはず。医師国家試験の結果だけが心配です。

さて、今回の研究結果の要点は、「食餌制限が難しい仔マウスで餌を報酬とした衝動性測定ができるようにしたよ」ということです。これができるようになると何が嬉しいか。一般に子供の衝動性は大人より高いとされていて、ADHDのような幼少期に発症する疾患でも衝動性の亢進は観察されます。なので子供の衝動性とその脳内メカニズムを研究することは重要なはずなのですが、これまで衝動性研究というのは方法論的な限界から大人の研究に偏っていました。このジレンマを克服する方法を開発した、ということです。

いろいろな工夫をしたのですが、主な改良点は餌制限の方法と訓練プログラムの変更です。訓練用のコンピュータープログラムも全部supplementary materialsで公開していますので、使いたい方はご自由にどうぞ。まだin press状態なのでsupplementary materialsは後日公開になりますが、いますぐ欲しいという方は大村まで連絡してください。

悔やまれるのは、論文発表が遅れたことです。ごく最近、同様の取り組みをした論文が連続して出てしまいました。「こんな面倒なこと、誰もやらないだろう」とたかをくくっていたのですが、見込みが甘かった、ということです。始めたのは私たちの方が早かったと思うのですが...。しかし、それでも私たちの方法の利点はいくつかあるので、誰かが使ってくれることを願うのみです。

最近は「方法・結果の惜しみない公開・共有」という流れが主流になりつつあり、科学界全体にとっては喜ばしいことだと思います。この論文もその流れに乗って方法から結果の生データまで全部公開しています。再現性の問題は科学界にとって最も重要な問題の1つです。自分の研究上の優位性を保ちたいがゆえに方法を一部隠す(正確に言えば隠してはいないんだけど、消極的公開というかなんというか)、というのは心情としては理解できるのですが、研究不正で科学界の信頼性が揺らいでいる今、そうも言っていられないだろう、と個人的には思っています。また、全員が出し惜しみなく公開・共有した場合、結果として科学全体の進展は早くなるでしょう。フリーライダーをどうするかという問題は残りますが。

何にせよ、学部生が論文発表する、というのは喜ばしいことでした。就職難から大学院生が減っているので、学部生をリクルートしてきたわけですが、それが一応実ったと言えるでしょう。どんどん研究室に出入りする学部生が増えてきているので、今後が楽しみです。