セロトニン再取り込み阻害薬による不安緩和作用の作用機序解明-光遺伝学を用いて

大村 優
(北海道大学大学院医学研究科 助教)

2019年7月6日土曜日

論文紹介:CRISPR/Cas9を介したゲノム編集によるセロトニン5-HT1A受容体機能喪失

先日、ゲノム編集によって成熟マウスのセロトニン5-HT1A受容体の機能を喪失させることに成功したという成果をまとめた論文が受理されました。

CRISPR/Cas9-mediated in vivo gene editing reveals that neuronal 5-HT1A receptors in the dorsal raphe nucleus contribute to body temperature regulation in mice.
Nishitani N, Ohmura Y, Nagayasu K, Shibui N, Kaneko S, Ohashi A, Yoshida T, Yamanaka A, Yoshioka M.
Brain Res. 2019 Jun 10. pii: S0006-8993(19)30336-1. doi:10.1016/j.brainres.2019.06.009. [Epub ahead of print]
PMID: 31194947

これは特任助教の西谷直也先生との研究です。西谷先生は2018年4月に京都大学から北海道大学に赴任されて、今回の研究チームに加わってくれました。

ゲノム編集を用いた研究は当研究室からは初の発表なので、嬉しいです。ゲノム編集を自在に使えるようになれば、私たちの研究テーマであるセロトニン受容体の研究を効率よく進められます。セロトニン受容体は14種類も存在し、各受容体を選択的に刺激したりブロックしたりする薬があまり存在しないことが研究上の課題でした。そこで、遺伝子レベルで選択的調節を行うことでこの課題を解決しようとしています。

この研究のもう1つのポイントは、受精卵ではなく成熟動物を使用している、ということです。受精卵に対するゲノム編集は技術的問題のみならず倫理的な問題が大きく、少なくともヒトに使用するのは明らかに時期尚早です。結果として生まれる子供たちに決定権がない上に、誰がその結果の責任を取るのかも不明確で、しかもその影響が次世代に受け継がれてしまう可能性もあるからです。しかし、成人に使用するのであれば、それらの問題はほぼ無くなります。本人の意思で決定すればよく、生殖細胞以外への適用に限れば次世代への影響もありません。私たちの研究が初というわけではないのですが、成熟動物への適用を試した研究はまだ少なく、情報を蓄積していく過程に貢献できたのではないかと考えています。

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